病害虫防除と気象情報

病害虫の発生は、多くの場合、気象条件に影響されます。病害虫により個々の発生条件は異なりますが、害虫は概して、高温で乾燥すると活動が活発になり、気温が低くなると活動が鈍くなります。病気はイネのいもち病や野菜・花の灰色カビ病のように多湿時に多発します。ですから、病害虫の発生動向を予測するためには、気象情報に注意する必要があります。

また、農薬散布においても気象条件の把握は必要になります。農薬散布をする場合、曇りの日か晴れた日で、風が弱い日が好ましいです。風速3m以上の場合は、近隣住宅に影響を与え可能性が大きいので、農薬散布は控えて下さい。住宅地が風下にならないように、風向にも気を付けて下さい。長雨が予想され、病害の発生が予想される場合、降雨まで半日以上あれば農薬散布を行った方が良いでしょう。半日以上あれば薬剤の効果は発揮できると思われます。そして、朝夕の涼しいときに散布しましょう。散布者の身体のために日中の暑い時間を避けましょう。

降雨と病気の発生

雨が病気の発生を助長し、特に梅雨期や秋、春の長雨時に病気が発生しやすいことはよく知られています。ここでは、もう少し細かく、雨の降り方と病気の発生について注目してみましょう。夏の夕立のような、短時間の激しい降雨と、梅雨期のようなしとしとと雨が長く続くような条件では、一般的に後者、つまり梅雨期のような条件の方が病気の発生は助長されます。それは、病原菌の種類と植物への感染方法が大きく関係しています。

植物の病気の7割以上は、菌類(カビ)によります。これら菌類は、多くの場合胞子を形成し、これが重要な伝染源となります。風や雨により飛散した病原菌の胞子は、植物体上に到達すると、そこで発芽し、植物体内に侵入しようとしますが、ここで重要な点は、ほとんどの場合、胞子が発芽し、感染する時には水、もしくは少なくとも90%以上の高い湿度が必要であるということです。要するに、葉や茎など植物体の表面が「濡れている時間」が非常に重要な意味を持ってきます。植物体表面は、本来的に水をはじきやすい性質を持っていますので、雨粒のより小さい、しとしとと降り続くような雨の方が、より植物体表面を長時間濡れた状態に保つことができるのです。ジョウロとハンドスプレーとで、どちらが植物表面を効率的に濡らせるかを考えればわかりやすいかも知れません。これが、長雨がより病気の発生を助長する大きな要因です。

もちろん、病気の発生が葉や茎の濡れ時間だけに影響される訳ではありません。長雨の時期は、雨が降っていなくても曇天が続くことが多く、これにより、高い湿度が維持され、また、雨により濡れた葉や株元土壌が乾きにくくなります。これらも病気の発生を助長する条件となります。

なお、うどんこ病のように、胞子の発芽、感染にさほど高い湿度を必要としない病原菌もいます。しかし、これらの菌類も、高い湿度が感染、発病により好適な条件であることは同じです。

一方、軟腐病、黒腐病のような、いわゆる細菌病は、水分(湿度)の他に、植物体表面の傷が感染には絶対必要になってきます。台風によりこれら細菌病の発生が助長されるというのは、強い風雨により生じる葉や茎の表面に生じる目に見えないほどに傷が大きな要因となります。

また、萎凋病、青枯病、疫病などの土壌伝染性の病気は、圃場内や土壌中の水の流れに大きく影響されます。大雨などで畑に雨水が流れ込むと、水の流れる方向に沿って病気が発生したり、水が溜まった場所で病気が多発することがあります。圃場の排水対策が重視されるのはこういった理由によります。

病害の防除にあたっては、気象条件を考慮することが不可欠です。最近では、インターネットなどで時間や地域などに関してよりきめ細かな気象情報を入手することができるようになりました。これらの情報を積極的に活用し、予測される気象条件から早め早めの防除対策を講じていくことが、的確な防除につながると言えます。

ホウレンソウ立枯病

ホウレンソウ立枯病(大雨による冠水後に発生しやすい)

ネギ黒斑病及びさび病

ネギ黒斑病及びさび病(長雨時に発生しやすい)