農林水産省令で定める技術の具体的内容及び導入上の留意事項について

1.たい肥その他の有機質資材の施用に関する技術であって、土壌の性質を改善する効果が高い技術

(1)たい肥等有機質資材施用技術

土壌診断(可給態窒素含有量及び土壌有機物含有量を含む土壌の性質の調査・分析)を行い、その結果に基づき、たい肥等有機質資材であって窒素成分と炭素成分のバランスのとれたもの(炭素窒素比(C/N比)がおおむね10から150の範囲となるもの)を施用する技術をいう。

たい肥等有機質資材の範囲としては、たい肥のほか、稲わら、作物残さ等が含まれるものと考えられるが、樹皮及びおがくずについては、炭素窒素比が大きく、作物の生育に障害を与えるおそれがあるので含まれない。

また、施用する種類や量については、土壌診断の結果に基づく適正なものと考えられるものとし、過剰な施用や未熟なたい肥の施用により、作物の生育を悪化させ、又は地下水の汚染等環境に負荷を与えることのないよう留意する必要がある。

(2)緑肥作物利用技術

土壌診断(可給態窒素含有量及び土壌有機物含有量を含む土壌の性質の調査・分析)を行い、その結果に基づき、緑肥作物(農地に有機物や養分を供給するために栽培される作物)を栽培して、農地にすき込む技術をいう。

緑肥作物の種類は限定しないものの、有機物や養分に富み、農地にすき込むものであり、地域に適合したものを選択することが必要である。

また、本技術の導入に併せて合理的な輪作体系の確立を図ることが望ましい。

なお、選択した緑肥作物の種類によっては、対抗植物としての効果を有するものがあり、この場合は、法第2条第3号の技術である「対抗植物利用技術」を同時に導入しているものとみなす。

2.肥料の施用に関する技術であって、化学的に合成された肥料の施用を減少させる効果が高い技術

(1)局所施肥技術

肥料を作物の根の周辺に局所的に施用する技術をいい、水稲作における側条施肥もこれに含まれる。

本技術の導入においては、肥料による作物への濃度障害を回避する観点から、農作物の種類、肥料の種類等に応じて施肥する位置等を調整する必要がある。

また、労働時間の軽減を図る観点から、側条施肥田植機や献立マルチ施肥機等局所施肥と同時に他の生産行程を行う農業機械を積極的かつ効率的に利用することが望ましい。

(2)肥効調節型肥料施用技術

本技術は、普通肥料のうち、いわゆる被覆肥料、化学合成緩効性肥料及び硝酸化成抑制剤入り肥料を施用する技術をいう。

本技術の導入においては、これらの肥効調節型肥料の種類により肥効パターンが異なることを十分考慮し、農作物の種類、土壌条件及び気象条件に応じて肥料の種類を選択する必要がある。

(3)有機質肥料施用技術

有機質(動植物質のものに限る。)を原料として使用する肥料を施用する技術をいう。

施用する種類や量については、土壌診断の結果、農作物の種類、含有する肥料成分量等を勘案して適正と考えられるものとし、過剰な施用や未熟なたい肥の施用により、作物の生育や品質を悪化させ、又は環境に著しい負荷を与えることのないよう留意する必要がある。

なお、本技術で利用される肥料には、いわゆる有機入り化成肥料も含まれるが、上記の二つの技術が、化学肥料の使用を3割程度低減することが可能であることを考慮すれば、有機質由来のものが原料ベースで3割以上含まれているものを使用することが望ましい。

3.有害動植物の防除に関する技術であって、化学的に合成された農薬の使用を減少させる効果が高いもの

(1)温湯種子消毒技術

種子を温湯に浸漬することにより、当該種子に付着した有害動植物を駆除する技術をいう。

本技術の導入においては、浸漬する温度や時間により防除効果や発芽率等が変動することから、適切な条件の下で行うことが必要である。

(2)機械除草技術

有害植物(有害動物の発生を助長する植物を含む。)を機械的方法により駆除する技術をいう。

本技術の導入においては、除草用機械による除草を効率的に行えるよう、農作物の栽植様式の調節やほ場の規模に応じた機械の種類の選択を行うことが必要である。

なお、本技術には、畦畔における有害動物の発生を助長する植物を機械的方法により駆除する技術が含まれる。

(3)除草用動物利用技術

有害植物を駆除するための小動物の農地における放し飼いを行う技術をいう。

具体的には、アイガモ又はコイを利用した水稲作が想定されるが、このほか、都道府県農業試験場等で駆除効果が明らかとされた小動物を利用するものも含まれる。

本技術の導入においては、除草用動物が野犬等の外敵の被害を受けないよう、柵等で保護するなど適切な条件で行うことが必要である。

(4)生物農薬利用技術

農薬取締法(昭和23年法律第82号)第1条の2第2項の天敵であって、同法第2条第1項又は第15条の2第1項の登録を受けたものを利用する技術をいい、捕食性昆虫、寄生性昆虫のほか、桔抗細菌、桔抗糸状菌等を導入する技術及びバンカー植物(天敵の増殖又は密度の維持に資する植物をいう。)を栽培する技術等が含まれる。

本技術の導入においては、害虫の発生密度や施設内の温度湿度等により防除効果が変動することから、適切な条件の下で行うことが必要である。

(5)対抗植物利用技術

土壌中の有害動植物を駆除し、又はそのまん延を防止する効果を有する植物を栽培する技術をいう。

対抗植物の種類は限定しないものの、都道府県農業試験場等で防除効果が明らかにされ、地域の特性に適合したものを選択することが必要である。

また、本技術の導入においては、対抗植物の防除効果は特異性が高いことから、防除対象とする線虫等賞言動植物の種類に応じて、その種類を選択することが必要であるとともに、合理的な輪作体系の確立を図ることが望ましい。

なお、対抗植物には、有害動植物を駆除し、又はそのまん延を防止する植物のみでなく、有害動植物の土壌中における密度を下げる等の効果が期待される非寄生植物も含まれる。

(6)抵抗性品種栽培・台木利用技術

有害動植物に対して抵抗性を持つ品種に属する農作物を栽培し、又は当該農作物を台木として利用する技術をいう。

抵抗性品種・台木の種類は限定しないものの、都道府県農業試験場等で防除効果が明らかにされ、防除対象とする有害動植物の種類や地域の特性に適合したものを選択することが必要である。

(7)土壌還元消毒技術

土壌中の酸素の濃度を低下させることにより、土壌中の有害動植物を駆除する技術をいう。

具体的には、畑において、有機物を施用するとともに、土壌中の水分を十分高めた上で、資材により被覆した状態を継続する技術のほか、都道府県農業試験場等で防除効果が明らかにされた技術が含まれる。

なお、土壌を被覆する資材については、適正に処理せずに廃棄すると、大気汚染等の環境負荷を与える恐れがある資材もあることから、使用後の処理が適正に行われるよう指導する必要がある。また、施用する有機物については、肥料成分を含有していることから、過剰な施肥につながらないよう留意する必要がある。

(8)熱利用土壌消毒技術

土壌に熱を加えてその温度を上昇させることにより、土壌中の有害動植物を駆除する技術をいう。

具体的には、太陽熱土壌消毒技術、熱水土壌消毒技術及び蒸気土壌消毒技術である。

本技術の導入においては、気候条伴や土壌条伴等により防除効果が変動することから、地域の特性に適合したものを選択することが必要である。

なお、土壌に熱を加える前にその表面を資材で被覆する場合については、適正に処理せずに廃棄すると、大気汚染等を引き起こす恐れがある資材もあることから、その使用後の処理が適正に行われるよう指導する必要がある。

(9)光利用技術

有害動植物を駆除し、又はそのまん延を防止するため、有害動植物を誘引し、若しくは忌避させ、又はその生理的機能を抑制する効果を有する光を利用する技術をいう。

具体的には、シルバーフィルム等の反射資材、粘着資材、非散布型農薬含有テープ、黄色灯及び紫外線除去フィルムを利用する技術である。

なお、粘着資材の利用と生物農薬利用技術を組み合わせて行う場合は、粘着資材で天敵を捕殺しないよう注意する必要がある。

(10)被覆栽培技術

農作物を有害動植物の付着を防止するための資材で被覆する技術をいう。

具体的には、べたかけ栽培技術、雨よけ栽培技術、トンネル栽培技術、袋かけ栽培技術、防虫ネットによる被覆栽培技術等である。

本技術の導入において、有害動植物による被害を予防する観点から、最適な被覆資材の選択、被覆状態の維持を行うことが必要である。

なお、本技術に用いられる資材は、適正に処理せずに廃棄すると、大気汚染等を引き起こす恐れがある資材もあることから、使用後の処理が適正に行われるよう指導する必要がある。

(11)フェロモン剤利用技術

農作物を害する昆虫のフェロモン作用を有する物質を有効成分とする薬剤であって、農薬取締法第2条第1項又は第15条の2第1項の登録を受けたものを利用する技術をいう。

本技術の導入において、害虫の発生密度やほ場の規模等により防除効果が変動することから、適切な条件で行うことが必要であるとともに、併せて発生予察を行うことが望ましい。

(12)マルチ栽培技術

土壌の表面を有害動植物のまん延を防止するための資材で被覆する技術をいう。

本技術の導入においては、まん延防止効果を維持する観点から、最適な被覆資材の選択、被覆状態の維持を行うことが必要である。

また、本技術には、わら類、被覆植物によるマルチ栽培技術も含まれる。

なお、本技術に用いられる資材は、適正に処理せずに廃棄すると、大気汚染等を引き起こす恐れがある資材もあることから、使用後の処理が適正に行われるよう指導する必要がある。