事例紹介: 第一医科株式会社

第一医科株式会社 BCP策定プロジェクトメンバーの方々。災害時には競合とも助け合いたい。今までなかった視点を与えてくれたBCP。
第一医科 ロゴ

第一医科株式会社は耳鼻科用医療機器メーカーとして、全国に3つの拠点を構える企業です。このたび東京都BCP策定支援事業の一環としてBCPの構築に取り組まれました。その経緯について、代表取締役社長 林正晃氏にお話をお伺いしました。

代表取締役社長林 正晃 氏
常務取締役泉川 彰男 氏
執行役員 管理部 部長河村 和雄 氏
総務部 次長小田島 一夫 氏
総務部山本 拓爾 氏
<ニュートン・コンサルティングメンバー>
代表取締役社長副島 一也
コンサルタント昆 正和
コンサルタント佐藤 雅彦

耳鼻科用医療機器を全国で提供

-事業内容を教えてください。

耳鼻科用医療機器の設計・製造・据え付け・修理をおこなっており、全国の顧客をサポートしています。医療機器(ユニット)は一度導入すると長くお使いいただくものですので、故障時のメンテナンスや新しいスタッフが入られた時の使い方指導など様々なサポート業務が発生します。当社は営業担当者の対応が非常に親身だということで、お客様にご評価をいただいております。

従業員の不安を取り除きたい

-今回BCP構築に取り組まれた理由を教えてください。

第一医科株式会社 代表取締役社長 林 正晃 氏
第一医科株式会社
代表取締役社長 林 正晃 氏

当社は情報セキュリティや防災など、利益に関連付けて考えることが困難な企業活動について様々な課題があると感じていました。これは企業にとってはリスクになりますし、従業員が不安を感じてしまうことになります。それでも社内では、散発的な防災・地震対策(消火器の整備、棚の耐震対策など)は随時おこなっていたのですが、包括的な対策にはなっていませんでした。

BCPという手法があることや取り組みの方法などは2年くらい前から商工会議所の案内や新聞記事で情報を入手していました。昨年の新型インフルエンザ流行時にはお客様が医療機関であるだけに、当社も対策が必要なことは痛感していたのですが、どこから取り組めば良いのか分からず困っていたところ、今回の東京都の支援事業について日経新聞の記事で発見し、即座に問い合わせた次第です。

有事の際に配置転換ができる仕組み作り

-策定されたBCPの内容を教えてください。

今回当社のユニット修理サービスを対象に、地震を想定したBCPを策定しました。

ユニット修理サービスは当社全体の売上貢献度から言えば小さいですし、本来BCPの対象とする“事業”ではなく、営業部門の業務の一つに過ぎませんが、万が一サービスが中断した際の影響の大きさを考慮して選びました。当社の修理サービスを提供できない事態になれば、医療機関のみならず末端の患者様にも深刻な影響を与える可能性があるからです。

主な事業継続策としては、お客様とのコミュニケーションを維持するために大阪営業所を中継連絡窓口とすることと、サービス要員が業務に就けない場合には力量認定者で代替することなどを計画しました。力量認定というのは、当社の医療機器を修理するスキルを有する者を社内的に認定する制度なのですが、現在は実際に修理を担当している者だけを認定しています。これを有事の際の対応のために、範囲を拡大するのが今回の取り組みです。営業部や製造部門の人間の中で修理をおこなうスキルがある人員に、不足している知識の教育と、有事には自分たちも修理サービスをおこなうのだ、という意識転換を促します。この取り組みは今後力を入れて進めていきたいと思っています。

対象事業ユニットの修理
対象リスク東京湾北部地震
被災シナリオ生産ラインの停止(機械装置の位置ずれ、仕掛品・製品の転倒、人員の欠員、電気・水道・通信インフラの停止)、サーバの停止による設計データのアクセス不能
予防・低減策部品棚、サーバ類の転倒防止策
バックアップデータの遠離保管(大阪営業所)
力量認定者の増員
非常時の持ち出し品及び備蓄品の完備
事業継続策要員の確保、手書き対応による修理受付業務の継続
部品・工具・車両の使用可否の確認
ピッキングと修理準備

-苦労されたポイントを教えてください。

BCP策定の過程というのは意思決定の連続ですが、なかなか議論が尽きず意見がまとまりませんでした。

有事の際も事業がストップしないようにどうにかしたいという想いは社員全員が共有しているのですが、いざ個別の施策についてどうするかを話し合ってみると、実は正反対のことを考えているような場面もありました。実施する程度や段階についてはなかなか意見が一致しないのです。そこは議論を尽くして、最終的には私が意思決定をしました。

ただ、こうした議論をしたことで、普段の会議体では議題にのぼることのない話題、例えば私の社員に対する想いや、社員自身の自分の家族に対する想いなど、或いは普段も話しているのだけれど災害という光を当てると全く別の側面が見えるような話題、例えば営業戦略などについても忌憚のない意見交換ができたことは非常に有意義でした。本来避けて通れない話題なのに、話す機会のないものだったからです。

仕入れ先や競合との協力関係構築へ

-BCPを策定されて副次的な効果などはありましたか?

第一医科株式会社 代表取締役社長 林 正晃 氏

BCP策定のための議論を進めていく中で、当社の競争力を高める施策やお客様の満足度を向上する施策がいくつも思い浮かびました。

まずは営業戦略です。前述のとおり当社はサービスの良さをお客様にご評価いただいていると自負しているのですが、その内実はサポート人員の質の高さにあります。これを一歩進めて、「人が良い」から良いのではなく、「仕組みが良い」から良いという状態にすることができれば、当社にとってさらなる強みとなることは間違いありません。そういった意味でも、力量認定者の拡大は当社の営業戦略上も有意義だと考えています。

また、今回様々な被災シナリオや当社の対策状況を考えたとき、一企業が持つ経営資源には限りがあるということを痛感しました。何かあった時に自社だけで何とかするのは本当に大変です。そこで現在、仕入れ先や競合と協力関係を構築すべく動いています。仕入れ先は地方に拠点があるところがありますので、そことは災害時の人員補填の可能性を探っています。競合とは、有事の際にお客様にご迷惑をおかけしないために助け合う仕組みができないかと考えています。たとえば、修理の際に良く必要になる部品に関しては共通部品を使うようにするなど、製品開発時点からの協力もあり得ます。

今まで競合企業とこんな話をする機会はなかったので、これもBCPを策定したおかげだと思っています。

熱い想いと効率的なメソッド

-ニュートンのコンサルティングはいかがでしたか?

担当していただいたコンサルタントのお二方には大変感謝しています。熱意をもって取り組んでくださったので、時として社員とぶつかるような場面もありました。それだけの想いをもって一緒に考えてくださったので、実のある内容になったと思っています。

また、最初の集合研修の際にお話のあった、「BCPはとにかくやってみて、それから直していく」という考え方も説得力がありました。こういったものに取り組む際は取り組むまでに時間がかかったり、取り組んでもなかなか進まなかったりするものですが、ニュートンさんの5ステップメソッドにそって、とにかく進めることによって、BCPの全体像をつかむことができました。

-今後の運用計画について教えてください。

今まで地震はいつか来るだろうとは思っていましたし、何とかしなくてはならないとも思っていましたが、じゃあ何をどうする、ということまで考えることはできていませんでした。今回の取り組みは社内での対策の方向性を定める良いきっかけになりましたので、今後もっとブラッシュアップしていきたいと考えています。

まずは、3月に予定している全社会議で訓練をおこない、社員への教育を開始します。その結果を受けて、さらなる改善・修正をしていく予定です。

-今日は貴重なお話をありがとうございました。


企業情報
称号: 第一医科株式会社
本社所在地: 東京都文京区本郷2-27-16
設立: 1955年2月
資本金: 1,200万円
従業員数: 55人
代表者: 代表取締役社長  林 正晃
事業内容: 医療機器の製造販売及び輸出入業務
URL: http://www.first-med.co.jp/

(2010年12月9日現在)

担当者の声 トップの強い想いは必ず伝わる

第一医科様をサポートさせて頂きまして特に感じたことは、林社長をはじめBCP推進メンバー全員が積極的に討議に参加されていたことです。 これは、耳鼻咽喉科へ医療機器の製品供給を止めてはならないという第一医科様の強い意思の現れだと思います。

早い段階から全社的な取り組みを行っていただいたことも印象に残っています。例えば全社集会を利用したBCPの教育や、保守サービスのスキルをアップする社内認定者増員の推進、取引先に積極的な連携を呼びかける活動等など、第一医科様のスピーディかつ積極的な姿勢が伺えました。

企業の社会的責任に強い想いで取り組む皆様の姿勢は、プロジェクトに参加されなかった他の従業員の方々にも十分に伝わるものと確信しております。 私どもとしましても、トップの強い想いは必要以上に言葉に出さずとも、その場の空気を通じて伝わるものであることが体感でき、非常に勉強となりました。