事例紹介: イワツキ株式会社

イワツキ株式会社 BCP策定プロジェクトメンバーの方々。当社に課せられた社会機能維持を実現できるBCPが策定できました
イワツキ ロゴ

イワツキ株式会社はガーゼ、脱脂綿、紙おむつなどの医療介護に関わる業務用消耗品を製造・販売する企業ですが、有事の際は災害物資を自治体へ供給する契約を締結している協定企業でもあります。このたび東京都BCP策定支援事業の一環としてBCPの構築に取り組まれました。その経緯について、代表取締役社長 岩月宏昌氏にお話をお伺いしました。

代表取締役社長岩月 宏昌 氏
取締役 管理本部長大関 正博 氏
管理本部 部長菅野 幸之助 氏
管理本部 総務課石井 良介 氏
営業本部 営業推進課長谷川 英一 氏
営業本部 購買課小池 隆雄 氏
営業本部 営業事務課小林 亜衣 氏
製品開発本部横山 理美 氏
<ニュートン・コンサルティングメンバー>
代表取締役社長副島 一也
コンサルタント村田 成巳
コンサルタント相馬 清隆

医療介護用消耗品メーカー

-事業内容を教えてください。

ガーゼ、脱脂綿、紙おむつなどの医療介護に関わる業務用消耗品を製造・販売しております。ガーゼ・脱脂綿などは医療機器であるため基準が決まっており、取扱商品での差別化が非常に困難な業界です。そんな中で当社は現場に近い営業員や開発者が積極的にお客様のニーズを聞き、それに対応した改良品をご提供することでご評価いただいています。

新型インフルBCPは自社で構築

-今回BCP構築に取り組まれた理由を教えてください。

イワツキ株式会社 代表取締役社長 岩月 宏昌 氏
イワツキ株式会社
代表取締役社長 岩月 宏昌 氏

3年前に鳥インフルエンザの危険性が話題になった頃から、そうした有事の際に当社はどのように事業を継続すれば良いのか、ということは検討しなくてはと考えておりました。当時中小企業庁のガイドラインを元に策定を試みたのですが、何とも雲をつかむような話でなかなか進みませんでした。

それでも、インフルエンザ対策は策定し、一昨年の新型インフルエンザ流行時には社員に周知したのですが、策定していた対策が強毒性を想定したものだったので、状況に応じて柔軟に対応を緩めていきました。

その際感じたのは、策定した対策は細かい対応策ばかりで、体系にはなっていないということで、よりしっかりとした取り組みが必要だということでした。そこで、今回の支援事業に申し込んだ次第です。

防災協定企業に求められるBCPとは

-策定されたBCPの内容を教えてください。

今回は地震に対するBCPを策定しました。

当社は東京都、板橋区、新潟県と地域防災計画上の協定企業として、災害時の物資供給をすることを契約していますので、今回のBCPでは自社の防災対策、事業復旧とともに、こうした自治体からの求めに応じるための対応を盛り込んでいます。

まず予防・低減策に関しては、社内の耐震対策をおこないます。ガラスの補強や本社在庫のロケーション変更を年間計画の中で実施していく予定です。また、検証してみたところ、東京湾北部地震の規模の災害になると、緊急時車両の許認可が不足していることが分かりましたので、車両台数を増やす手配をする予定です。少し先の話にはなりますが、次のステップでは、災害時の新潟工場との連携/活用方法について検討する予定です。

事業継続策については、地震により電力の停止が予想されますので、すべての作業を手作業で実施していくことで目標復旧時間を実現する対策を検討しました。商品を発送するためには配送センターへ出荷データを送る必要があるのですが、これは被災状況に鑑み、自転車で伝票を運ぶことを考えています。

緊急時の自治体からの要請については要請が来てからすぐに本社在庫を配送できるように復旧にかかわらない部署のメンバーを配送要員として準備しておくことで対応します。

対象事業医療・救急商品供給
対象リスク地震
被災シナリオ東京湾北部地震が朝5:00に発生。本社社屋・製品は問題ないが、室内は物が散乱している状態。サーバーに損傷はないが、公共インフラが1日ストップしている。携帯による安否確認は可能であり、出社可能社員は35%と少ない状態である。
事業継続策・電力ストップに対して、通常の商品供給体制から手作業への移行
・本社在庫を緊急時に配送する
・近隣の病院・災害避難所への商品供給を優先する。
・配送については徒歩・自転車を活用する。
・地震の時に対策本部メンバーについては、本社参集要員と東京配送センターへ直接出勤要員を規定しておく。
備考・従業員の居住地等MAPの作成により、交通機関停止時の出社可否の想定を実施
・重要取引先との災害対策時対応に関する事前合意を進める
・セコム安否確認システムでの訓練を毎月行う。

-苦労されたポイントはありますか。

BCPを策定するにあたって、一番難しいと感じたのは、最初の被害想定を決定するステップです。被害が甚大だと想定すると対策がお手上げになりますし、あまり被害がないという想定では不安になるばかりです。絞ろうとしてもどんどん広がってしまうのを、割り切って決めるのは大変でした。しかし、どんな想定をおいたとしても想定外のことは起こりますので、柔軟な対応ができるものを作ろうと努めました。

あとは、被災シナリオの中で、情報が不足していることも多く、取引先や自治体とさらに情報共有していく必要性を感じています。例えば、当社のお客様である病院では、実際に地震が起こって怪我人が殺到するような事態になったら、どのような物資が一番必要なのか、ということも事前に話し合っておくことで、有事に迅速な対応が可能になります。

前述のとおり、当社は東京都、板橋区、新潟県と災害物資供給の協定を結んでいるのですが、実際有事の際にいつ、どのような手続きで、どんな要請が来るのかなど詳細については何も明確になっていません。このあたりも各自治体と話し合いが必要だと感じています。

-自社で策定した新型インフルBCPとの違いはありましたか。

イワツキ株式会社 代表取締役社長 岩月 宏昌 氏

一昨年策定した新型インフルエンザ対策は、流行し始めてから急ピッチで作成したからということもありますが、簡単な対応策にとどまる内容でした。起こる事象を想定して、その際の対応策を場当たり的に記載してあるのですが、事業復旧についてなど抜けている部分が多々ありました。

こうした対策を担当者がガイドラインなどにそって作成すると、形としては出来上がりますが、ではそれをどうやって社員に伝えて、実際に動いてもらうのかというところで行き詰まってしまいます。いわば自己満足で完結してしまうわけです。

今回は東京都の事業に参加する、コンサルタントの方が指導してくれる、ということで各部門から責任者が一堂に会して取り組めたことも成果に結びついていると思います。

-何か気づきはありましたでしょうか。

備えが不足していることを実感しました。自宅では家具を固定するなど、実は色々な対策をしているのに、会社では殆ど何もできていないことも、今回このプロジェクトに取り組んで初めて気がつきました。一方で、実は新型インフルエンザのときに安否確認システムを導入していたのですが、まだテストをしたことがなかったことも判明しましたので、定期的なテストの予定を組むことになりました。

また、今回業務の流れを今一度整理することで通常業務の中でも改善点を発見したり、災害時も対応できる業務の方法に変更するなど、通常業務の見直しにも役に立っていると感じています。

今回BCP策定に取り組んだことで、大きな成果だと感じていることがもうひとつあるのですが、それは社員のモチベーションが格段にあがったことです。私たちの会社は災害のときにいの一番に事業を再開しなくてはならない重要な仕事をしている会社なのだという自負を、改めて社員全員に感じてもらう非常に良い機会になったと思っています。

適切な事例提示で分かりやすいコンサルティング

-ニュートンのコンサルティングはいかがでしたか?

前述のとおり、自社で取り組んだとしたら、最初の被害想定のステップで行き詰まることは明白です。ニュートンさんが前例などを用いて指針を示してくださり、大きな方向性について一緒に考えてくださったのは効率的に進めるうえで大変役に立ちました。しかし、前例を示すと言っても、各社、業界や規模、それぞれの事情が違うので、適切な例を提示するのも大変だろうと感心しました。

また、2ヶ月という短い期間ではありましたが、担当コンサルタントのお二方が真剣に取り組んでくださったので、私たちも頑張らなくてはと思い、厳しいスケジュールの中、どうにか完成にこぎつけられました。来訪日以外にもメールや電話できめ細かくサポートいただけてありがたかったです。

-今後の運用計画を教えてください。

とにかく今はどうにかスタートラインに立った状態です。しかし、どうしていいか分からない状態からは脱しましたので、今後は今回策定したBCPをもとに、ブラッシュアップを重ねていきます。

今回策定にあたっては、当社の商流において非常に重要な役割を担う物流業者さんにもご参加いただいたのですが、これは非常に有意義でした。今後そちらでもBCPを策定されるようなので、連携方法を整備していきたいと考えています。

社内的には、まずは年明けにプロジェクトチームで訓練を実施し、その後全社に展開する予定でいます。

-今日は貴重なお話をありがとうございました。


企業情報
称号: イワツキ株式会社
本社所在地: 東京都板橋区志村1-32-18
設立: 1923年10月(創業)
資本金: 7,200万円
従業員数: 241人
代表者: 代表取締役社長  岩月 宏昌
事業内容: 繊維製衛生材料、医療・介護用品の製造・販売
URL: http://www.iwatsuki.co.jp/

(2010年9月末日現在)

担当者の声 滲み出る、定着した企業文化としての“誠実さ”が強さの秘密

イワツキ株式会社様の今回の取り組みをお手伝いさせていただいて特に印象深かったのは、プロジェクトに対する会社全体としての“真面目さ、誠実さ“です。岩月社長はじめ、プロジェクトには今回の対象事業の各業務担当者様が毎回出席され、業務ごとの復旧手順策定についても担当部署が担当し、商品供給に欠かせない協力企業である配送センターと共同でBCP策定に取り組むなどプロジェクト全体を通してその誠実な姿勢が取扱商品とも相まって企業全体に行き渡っていることに深く感銘いたしました。

また、事業特性として災害発生時は自社の事業復旧に加えて、地域・行政・病院等の緊急要請に対応するという社会的使命をお持ちであり、かつ社員の皆様一人一人がそれをしっかりと認識しておられることも当プロジェクトにおいては大きなモチベーション・結束力となりプロジェクト推進の原動力にもなったのではないかと思います。今回のプロジェクトでは最初のパイロット版の作成をお手伝いさせていただきましたが、今後は更にブラッシュアップを重ね、業界の先導者として平時の事業継続はもとより、地域や災害時になくてはならない企業として更なる発展をされることを心よりお祈りいたします。