東京都BCP策定支援事業 企業事例: 株式会社興伸

株式会社興伸 BCP策定プロジェクトメンバーの方々。自社の取り組みではなかなか進まなかったBCPを短期間で構築できました。
興伸 ロゴ

株式会社興伸はメーリングサービス、物流サービス、キャンペーン運営サービス等、クライアントが個々に行っているオペレーションを支援するアウトソーサーです。

このたび東京都BCP策定支援事業の一環としてBCPの構築に取り組まれました。その経緯について、代表取締役 小野伸太郎氏にお話をお伺いしました。

代表取締役小野 伸太郎 氏
第二業務部 部長防村 正明 氏
第二業務部 主任平井 雅之 氏
第二業務部 主任田村 兼太郎 氏
システム部小山 智 氏
総務部 課長木村 幸司 氏
総務部八重樫 洋介 氏
総務部村上 良則 氏
<ニュートン・コンサルティングメンバー>
代表取締役社長副島 一也
コンサルタント英 嘉明
コンサルタント英 由佳

セキュリティを重視したメーリングサービス

-事業内容を教えてください。

ダイレクトメールを中心としたメーリングサービス事業、コールセンターをともなったキャンペーン事務局の運営サービス事業と物流サービス事業が大きな3本柱になります。当社の事業はお客様の情報資産(情報と信頼)をお預かりしておこなうものなので、早い時期からトータルセキュリティマネジメントシステムの確立を目指し、QMS、PMS(Pマーク)やISMSなどの認証取得にも積極的に取り組んでまいりました。

社内での取り組みはうまく進まなかった

-今回BCP構築に取り組まれた理由を教えてください。

興伸 代表取締役 小野 伸太郎 氏
株式会社興伸
代表取締役 小野 伸太郎氏

当社は受け身の業務性質であるため、1日たりとも仕事を中断するわけにはいかないことから、かねてより事業継続に関してはいずれ取り組まなくてはならない、という意識がありました。そこで、昨年初より社内で地震・火災・水害を想定したBCP構築にとりかかったのですが、5月頃に新型インフルエンザが猛威をふるうようになったため、対象リスクをパンデミックに変更して策定を進めておりました。

しかし、社内で取り組んでもなかなか思うように進みませんでした。というのも、社内では限られた情報しか手に入らず、限られた知識の中で色々なケースを考えても、限られた範囲の対応しか思いつかないわけです。たとえば、通信や社会インフラなどの被害想定や復旧予測についても当社では詳しい情報が入手できませんでした。それで、壁にあたり時間がかかってしまっていました。

そこへ今回、東京都がBCP策定支援事業を始めたとのニュースをみて、これは何としても参加しなくてはいけないと思い申し込みました。

重要取引先を選定したBCP

-策定されたBCPの内容を教えてください。

今回当社は地震に対するBCPを策定しました。新型インフルが下火になったので、まずは地震対策に取り組もうと考えました。今回の取り組みでインフラ部分の対策が出来上がれば、その後パンデミックを含めその他のリスクに展開するのは比較的容易であると考えています。

予防・逓減策としては、社内の耐震状態の改善、重要代替機の購入、バックアップ作業の改善をおこないます。当社ビルは立地的な地盤の問題や水害の被害を心配しておりましたが、今回の取り組みの中で、江戸川区の防災マップなどを見せていただいたところ、リスクはあるもののかなり限定的であることが判り対策も立てやすくなりました。既に数年前には土壌調査をおこない、建物自体の耐震補強を実施済みです。しかし、今回改めて震度6強を想定し、建物の内外を見直したところ、まだまだ至らないところがたくさん出てまいりました。オフィス内にも危険がいっぱいと感じましたので、ガラスの補強や什器・備品の固定などをおこないます。また、業務の棚卸しをしたところ、重要機器に関しては代替機を用意する以外方法がないことが判明しましたので、こちらの購入を検討中です。

また、事業継続策では当社は、被災時にはまずは重要取引先11社に対する業務を優先させる、ということを決めました。この重要取引先とは、社会的な責任が大きいと思われるお客様、ルーティーンでご発注をいただいているお客様や売上高が高いお客様です。こうしてサービス提供範囲を絞ることで早期復旧を目指します。取り組みの中では、この体制を支えるための人員の割り出しや、その社員の居住地確認による交通機関停止時の出社可否の想定などもおこない、実現性を高めています。

対象事業メーリングサービス
対象リスク地震
被害シナリオ12月20日午前5時、東京湾北部地域を中心に首都圏直下型の大地震、M7.3、震度6強が発生し、約20%の社員が負傷。本社ビルは損傷せず立ち入り可能だが、室内は乱雑化、一部機器が損傷した。
電気、固定電話、データ通信、公共交通機関が1日停止、主要道路、環状7号線以内の地域が2日間車両通行禁止となった。
携帯電話は、つながり難い状態ではあるが、接続可能であった。
事業継続策・徒歩圏社員即時出社を含めた社員の総動員により、重要取引先に対する業務を優先して復旧対応にあたる。
・重要顧客に対して24時間以内に当社の被災状況、復旧見込みを報告し、顧客の意向を確認する
・システムの耐震強化および二重化体制の強化
備考・従業員の居住地等MAPの作成により、交通機関停止時の出社可否の想定を実施
・重要顧客との災害対策時対応に関する事前合意を進める

-何か課題などはありますか?

結局投資が避けて通れないのは悩みどころです。お客様の資産を守るためにはコストアップは仕方ないと考えてはいるのですが、代替機の購入などは結構な負担になります。例えば、重要機器の稼動率が現在80%だったとします。代替用にもう1台購入するとなると、稼動率は40%まで落ちてしまうわけです。このあたりは是非、都としても助成金や低利融資制度などをご検討いただきたいと考えます。

また、計画策定にあたっては大規模地震などの実体験がないので臨場感・危機感に欠けているのではという危惧があります。今回当社は重要取引先への業務継続を優先課題として検討をしたのですが、その業務以前に、建物自体のもう一歩踏み込んだ安全性の確認方法や、業務スペースを確保するための作業の詳細や所要時間の予測など、まだ詰めきれていないことがたくさんあると感じています。今回は期間も短かったので割り切って進めましたが、今後引続き検討していきたいと考えています。

判断を促すコンサルティング

-ニュートンのコンサルティングはいかがでしたか?

クラスメソッド代表取締役 横田 聡氏

あらゆる面で大変参考になりました。むしろ我々がこれまでしてきたことは何だったのだろう、と思うほどでした(笑)。社内では明確にできなかった様々な外部情報(インフラの被害想定や区の公開している震災情報など)の入手を支援してくださったことで、対策が立てやすく、分かりやすくなりました。

また、会議の進め方にしても社内のみでおこなっているときは担当者が社内の人間の意見を聞けば聞くほど自分の意見がどこかにいってしまい、収拾がつかなくなることがあるのですが、ニュートンさんは明確な方向性を持って議論を導いてくれました。答えを持ってくるのではなく、判断を促す、判断せざるを得ないように追い込んで判断をさせる、迷ったときには判断基準を示してくれる、ということで当方も割り切って進めることができたと思います。

私は経営者として日々判断の連続ですが、今回改めて、間違ったとしても判断は早くすべきだと感じましたね。間違っていることがわかったら後から直せばいいのですから。

-今後の運用計画を教えてください。

全業務についてのBCPの策定完了を年内目標にしています。来年の経営計画にはそれを含めてPDCAをまわしたいと考えています。また、当社は既にIMS(統合マネジメントシステム)があるので、ゆくゆくはその中に組み込んでいきたいと思っています。各マネジメントシステムには共通項がたくさんあるので、まとめておこなった方が効率的で、且つ漏れがないと思います。

今なればこそ、取り組んで欲しいBCP

-取り組みを検討中の企業へメッセージをお願いします。

企業には、社員の安全とお客様からお預かりしている資産を守る義務があると考えます。不景気の中、様々な課題がありますが、当社では「安心・安全をお届けし、お客様の笑顔が見たい」との理念を掲げておりますので、、BCPも今なればこそ、という気持ちで取り組んでおります。大変でも辛くても取り組まなくてはならないテーマだと当社は位置づけています。

BCPは有事の際の対策というだけでなく、平時においては社員の方向性を合わせて業務品質の強化に役立ち、営業的には競合他社との差別化のポイントでもあります。せっかくの取り組みをしっかりと社外にアピールすることによって、今後の事業拡大にも役に立つと確信しております。

そのためには、取り組むにあたって、全社員がその意図、目的などを共有することが大切です。そしてそれを促すのはやはりトップの役割です。何かあった時でもお客様が安心できる、会社の業務も継続できる、ひいては社員の家族も被害が少なく個人にとっても役に立つ、そういうものを作ることが肝要です。

-今日は貴重なお話をありがとうございました。


企業情報
称号: 株式会社興伸
本社所在地: 東京都江戸川区春江町2-31-15
設立: 1974年9月
資本金: 3,020万円
従業員数: 197人
代表者: 代表取締役  小野 伸太郎
事業内容: メーリングサービス、プレミアムキャンペーンサービス、物流サービス 他
URL: http://www.kou-shin.com/

(2010年9月末日現在)

担当者の声 自分達が出来ることは何か、を自らの言葉、現場視点で徹底討議

興伸様には、小野社長の‘現場の考えを引き出し、尊重しよう’という現場重視の優れたリーダーシップと、‘社長の前でも何でも言える’という風通しの良い社風を感じました。

また興伸様のプロジェクトメンバーの方々からは「お客様の為に自分達が出来ることは何か」を自らの言葉で語る、現場視点で討議する、そして地に足の着いた対策を講じるという姿勢を強く感じました。このような興伸様のプロジェクトに参画でき、本当に光栄に思っております。

引き続き、今度は興伸様メンバーだけで他の主要事業2つについてもBCPを策定され、来年に一斉導入されることになっていますが、今回の経験と成果を活かして必ずや実現されるものと確信しております。