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民宿登龍荘の取組み 東京都八丈島八丈町三根1064-1

全館バリアフリーの民宿

左から喜田吉一さん、美奈さん、薫さん

登龍荘(のぼりゅうそう)は羽田空港から空路で約1時間の八丈島にある民宿です。2023年1月「東京都宿泊施設バリアフリー化支援補助金」を活用して全館バリアフリー化された宿泊施設としてリニューアルオープンしました。これまでのバリアフリー化の取組みについてオーナーの喜田吉一さん、ご家族の喜田美奈さん、喜田薫さんにお話を伺いました。

左から喜田吉一さん、美奈さん、薫さん

「これからはバリアフリー化の時代」と捉えて全館バリアフリー化へ!

登龍荘入口階段とスロープ

シングルルーム

ツインルーム

車いすのまま乗れる送迎車

施設自体が古くなり、改修を検討し始めた2019年秋、八丈島で開催された東京都主催の宿泊施設バリアフリー化促進セミナーに参加したことをきっかけに、「東京都の補助金を活用して改修が出来ないだろうか」考えました。「これからはバリアフリー化された宿泊施設が重宝される」「バリアフリー化の時代、ユニバーサルデザインの時代」という言葉に押されて全館完全バリアフリー化の検討を始めました。その直後のコロナ禍など、紆余曲折はありましたが、東京都のバリアフリー化促進アドバイザーの助言・アドバイスをもらいながらあきらめることなく粘り強く計画を進めてきました。足掛け3年に及ぶ改修計画となりましたが、玄関には緩やかな斜度のスロープを設置、入り口から全てフラットな設計で新たな登龍荘が誕生しました。

シングルルーム2室、ツインルーム4室の計6部屋には電動ベッドを設置し、全館すべて都の設計基準をクリアした安心・安全な空間をつくることができました。加えて、車いす使用のお客様が乗車可能な車両も配備し、ご希望により空港送迎等を行っています。今では段差が解消されたことで、車いす使用のお客様だけでなく足腰が弱くなった高齢者でも快適に八丈島での滞在を存分に楽しんでいただけるようになりました。

リニューアルオープンしてからは障害をお持ちのお客様から「この宿だから泊まれた。」「とても快適だった。」「また来ますね。」等の温かい言葉に思い切って改修をして本当に良かったと思っています。  
当初はできる範囲での改修(リフォームレベル)でよいと考えていましたが、この先ずっとその施設を運営していく中で、その都度悩みながらリフォームを繰り返すよりは、これからの時代にあった全面的にバリアフリー化された宿泊施設をつくりたいという家族の思いが今回具現化されました。

コロナ禍や、世界情勢への不安などがあり、リニューアルオープンには3年以上かかりました。その間、物価の高騰や工事資材が届かず、思うように改修計画が進まないこともありました。完全バリアフリー化の面では、細かな部分でどのようにしてよいか分からない点も多々あり、東京都のアドバイザーを交えて設計士に相談、開業前には脊椎損傷・下半身麻痺で車いす使用の知人に、部屋や共有部分の使い勝手をチェックしてもらいました。その際に初めて島内に車いす使用者が利用できるタクシーが無いことを知り、それがきっかけで先述の車いすのまま乗れる送迎車両を調達することにしました。島に来ていただいても、車いす使用者が当館までアクセスできないのではバリアフリー改修した意味がないと思ったからです。

登龍荘入口階段とスロープ

シングルルーム

ツインルーム

車いすのまま乗れる送迎車

バリアフリー化にしてよかったことは

窓から見える親王椰子と八丈富士

広いスペースのトイレ

フラットな入口の共有風呂

車いす使用者が空港送迎や館内での移動の心配もなく、安心してお泊りいただけることになってよかったです。脳梗塞による下半身不随で車いす使用の男性が、奥様の誕生日に思い出の八丈島旅行をプレゼントしたかったとのこと。でも車いす使用者が泊まれる宿を探すのが大変だったそうです。チェックアウトの時に「登龍荘のおかげでとても良いプレゼントができました。」「本当に良い思い出になりました。」と言っていただいた時は胸が熱くなり、これまでの苦労が吹き飛んだのを今でも覚えています。

リニューアルしてから良い意味で想定外のことも起きています。オープン当初は、高齢化する観光客を意識していましたが、オープンしてからは訪日外国人旅行者(これまで北欧、フランス、ドイツ、イタリア、中国、シンガポール、マレーシアからの外国人旅行者)にも利用されています。特にヨーロッパからのお客様には、窓から見える親王椰子(島ではロべと呼ばれています)の風景が南国的だと好評です。

皆さん、お部屋に入ると「とても広々としている。」と言って喜んでくれます。車いす使用者が室内で動きやすいように余分なものは置かず、広めの空間を取っています。バリアフリー化するということは誰もが喜んでくれることだと分かり、どんな方でもお招きできる自信が湧いてきました。

窓から見える親王椰子と八丈富士

広いスペースのトイレ

フラットな入口の共有風呂

手付かずの自然の宝庫、八丈島を満喫できる宿を目指して

八丈富士(写真提供:公益財団法人東京都島しょ振興公社)

青ヶ島(写真提供:公益財団法人東京都島しょ振興公社)

ゆーゆー牧場(写真提供:八丈島乳業株式会社)

リニューアルオープン後は今まで経験のなかった外国人旅行者の受入など、とにかく全力疾走・フル稼働の1年目でした。ローシーズンでも外国のお客様はやってくることが分かり、島に住む私たち自身がそうしたお客様のニーズや八丈島の魅力をまだまだ把握発信しきれていなかったと感じています。

宿泊客に来島の目的を聞くと、八丈富士登山と青ヶ島と答える方が多いことに驚きました。特に青ヶ島は日本で一番秘境の島ということで人気があるそうです。青ヶ島には八丈島から船とヘリコプターが出ていますが、ヘリコプターは人気で予約が難しくなっています。歩くことが好きな方には八丈富士への登山が人気です。車で五合目まで行き、歩いて2、3時間程度で山頂まで往復できる手ごろな登山コースとなっています。青ヶ島も八丈富士も柵などが設置されておらず、手付かずの自然を満喫できます。海外からのお客様が地べたに寝転んでいるので心配になって尋ねると、八丈島の澄んだ星空に見とれていたとのことでした。当たり前であった夜空の星も大きな観光資源のひとつだと改めて認識しました。

今後もこの改修から学んだお客様のニーズをしっかりと捉えて、受け入れ態勢を整備していきます。全館バリアフリーの宿で誰もが安心してゆったりと寛ぎながら、手付かずの自然が残る八丈島の魅力を世界に向けて発信できる宿を目指していきたいと思っています。

八丈富士(写真提供:公益財団法人東京都島しょ振興公社)

青ヶ島(写真提供:公益財団法人東京都島しょ振興公社)

ゆーゆー牧場(写真提供:八丈島乳業株式会社)

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